株中毒の闇鍋ブログ

株で財産を溶かした管理人の、現実逃避ブログです。時事、歴史ネタ中心になるかな……

天皇誕生日記念? 『テムズとともに』感想

   天皇誕生日なので、昨年出た新装版『テムズとともに』の感想というか、印象に残ったところを書いていきます。

この本の概要

 今上陛下が、20代の頃のイギリス留学経験を、当時のメモを元に、約十年経ってから本にまとめたものです。(留学当時はまだ昭和天皇の在位中でしたので、陛下は皇孫であらせられ、浩宮(ひろのみや)様と国民はお呼びしていました。)それが平成に至って皇太子殿下となられて数年後に出版され、それをご即位されて後の昨年、新装版として出版されたものです。

「一人の天皇の皇孫時代の記録」という意味で日本史的にも、「1980年代の、外国人から見たオックスフォード大学」という英国史の史料としても、重要になっていくかもしれないと思います。(留学からご執筆まで約10年のブランクが空いているので、後世の史料としては、元になったメモ類の方が重要になるかもしれませんが。)

 個人的には、私は、この本の初版時、話題を聞きつけて、買いに行きたかったのですが、どこで買えるのかわからず、買えませんでした。学習院大に行って、学内の書店に行けばあったんでしょうけれど、そこまで気が回らず、また、「よその学校に軽々しく入るものではない」、という高校までの教えが抜けていなかったので、多分思いついても行けなかったと思います。

全体の印象

社交的でないとやってけない印象。文系研究者とは、机の前でひとりうんうん唸っているイメージがありましたが、それとは遠い感じ。(唸っていたであろう描写もありますけど)

    勉強だけじゃなく、スポーツ、観劇、登山、室内楽と色々アクティブに活動している印象。20代の体力凄い……。当然ですが、ご公務も合間合間にこなしてらっしゃいます。

  あと、入学前の語学研修の段階で、身分を隠して行った地元のお祭りで、「東京のどこから来たの?」と聞かれてうっかり「東京の中心部から」と答えたために、バレてしまっていた、というエピソードがありました。何ですぐ「千代田区」が出てこなかったのかな、と思ったのですが、学習院という、区外の私学に通われたためかな、と、義務教育は地元公立校で受けた者としては思いました。

オックスフォード大学について

オックスフォードの構成として、コレッジ(学寮)と学部・学科の関係がよくわかりませんでした。単なる生活の場ではなく、教育機関としても存在するコレッジが集まってオックスフォード大学を形成し、成立させている、まではまだわかるのですが、コレッジ=学部・学科ではなく、コレッジと学部・学科の両方に学生が所属するというのが、どういう状態になるのかというのがよくわからず。例えば、同じ文学部の人でも専攻するものによってコレッジが違うとか、あるいは学部・学科が違ってもコレッジが同じとかあるということなんでしょうかねぇ……。(頭がよじれます。)

 ちなみに、陛下のいらしたマートン・コレッジには、後に彬子様も留学されています。

ja.wikipedia.org

   またオックスフォードの学生と、それ以外の市民との確執がある、という話でチラッと、14世紀の学生と市民との間の、 死者まで出た大乱闘について触れられているのですが、そのきっかけが、ワインの質に学生がケチをつけたことというのが怖かったです。

    これは在フランスのツイッタラーさんが紹介していたのですが、オックスフォードに限らず、中世の大学生というのは粗暴だったようです。

natgeo.nikkeibp.co.jp

    日本でも、平安時代、大学寮(官吏の養成校のこと)の学生が、相撲取りを相手に喧嘩して勝ってしまった、という話が今昔物語にありますが。(こっちは怪談らしいオチがあるので、信憑性は弱くはなりますが、元になるような出来事はあったのでしょう)

hon-yak.net

  もちろん、この本の時代ではではそんなことはなく、出てくる学生さんも先生も、育ちの良さそうな穏やかな人が多かったです。   

寮での生活

    食事は朝昼晩、食堂で摂ることも可能なのは、まあ日本でもあるかな?  ですが、掃除も、定期的に人が来て、ゴミの回収と床掃除とか、軽いものならしてくれるというのがすごいなと思いました。異性を引っ張り込んだりしてないかなどの監視も兼ねてるそうですが。

     ただし、洗濯はランドリー(文中では「ローンドリー」)で。乾燥機が争奪戦なのはどこでも変わらないようです。

    ちなみに、食事の質はコレッジによっても違うとのこと。陛下のいたマートン・コレッジの食事は美味しかった模様。

     すべての場面でそうではないですが、時々、紅茶やコーヒーが濃かった、という描写が出るのが印象に残りました。食堂での朝食の紅茶がコーヒーみたいな色という記述とか。頭が冴えるようにですかね。

    その他、ある学生の集まりで、床に座って絨毯のうえにコーヒーのマグを置くとか、食堂が狭くて、テーブルの上をやむなく土足で歩く人がいた、という場面も、今から見るとひっかかりました。もし2020年ごろまでこうした習慣が普通に残ってたとすれば、コロナ……。

    お風呂事情は厳しく、湯舟に浸かって温まるということは望めなかったそうです。古代ローマの浴場跡を見て、陛下は、ローマ時代のお風呂事情に思いを馳せたということですが、くしくも、この本の初版の20年後くらいに話題になるマンガ『テルマエ・ロマエ』の作者も、イタリアなどで、ローマ期の遺跡を見ながら同じようなことを思っていたとかいってた記憶が……。

その他の事項

    学寮での生活だけでなく、研究の過程についてとか、旅行・登山とか、歴史とかについても簡潔に書かれています。(理解するには読み手の知力が問われますが。)

   尻切れトンボな紹介になりましたが、イギリスに興味のある方は、是非。

 

では。

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